泡沫に溶けて【前編】
小説最高ランク : 6 , 更新:
人には言えない恋をしている。
「レオン、海へ水を組みに行ってちょうだい。飲水が足らなくなってきていてね」
「ん、分かったよ。母さん」
部屋でのんびりと本を読んでいた俺は、母さんからの申し出に笑みを作って応じた。母さんは幼い妹達の面倒を見ながら、「遅い時間にごめんなさいね」と申し訳なさそうな顔をする。井戸のない俺の家では、こうやって水が足りなくなれば逐一汲みに行く必要があって、それをやるのは俺の仕事だった。パタリと本を閉じて机の上に置くと、おもむろに腰を上げた。勝手口へと向かっていき、大きな水汲み用のバケツを手に取る。それから、「行ってきます」と行って出入口から家を出た。
俺の住むこの島国は、地図にも乗らないほどの小さな島だ。だから、この島がどこに位置するかわからない。それ故に、必要なものはほとんど海からの調達。足りないものはその他で代用。他の国が何処にあるのかすら分からない現状下、流通など不可能だった。その生活に不満を感じたことは無かったが、かつての俺はこの海のその先へ行きたかった。父さんと、同じように。
漁師だった父さんは昔から、この島が地図のどこに位置するのか知りたいと言っていた。
「きっとこの海の向こうには面白いものがいっぱいあるぞ、レオ」
キラキラと少年のような笑みでそう語る父さん。島国での生活に慣れきってしまった島人たちは、馬鹿なヤツだと父さんを笑ったが、俺はそうは思わなかった。
「いつか、この先へ行くんだ」
漁の為に買った木造の船を撫でながら、そう語った父さんは、あの豪雨の日に海に沈んだ。同じ船に乗っていた漁師曰く、魚を引き上げる際に波に呑まれたらしい。そして、そのまま……。船は帰ってきたものの、父のいない生活に母さんは酷くやつれた。だから、出来ることはしてやりたい。それに、最愛の父を奪った海を渡りたいなど、そんな夢などもう無かった。
おはようございます☀
とあるnanaコミュニティに載せる予定の小説前編です
何でもキーワードで縛りがあるので難しい……(指定されたキーワードは後編のときに)
後編もそろそろ書き終わりますが、後編は午後に……(尻たたき)
前編ぐらいの量で終わらせるつもりが……、文字数が増えまくってます……
設定を盛り込むのが好きです、はい
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