遥けき想いは海の底5

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更新： 2017/07/14 14:00:06

遥けき想いは海の底5

どっと汗が出始め、海の向こうに居座る夕暮れの最期の時を見届けた。

…帰らなければ。

そう想いながらも、そこからは動きたくなど無くて。なぜか足が動かなくて。
自分は深いため息をついた。

朱色から藍色に変わる空の様は儚く、そして美しかった。
海からの景色からは、滅多に見れない珍しい光景。
…そんな光景に、また、深いため息をついた。

家に帰り、独りだけの孤独な空間に身を投じた。悲しみが迫り、息が苦しくなった。
空はとっくに暗くなり、部屋は暗黒に染まり切っていた。

ソファに身体を預けて、よく見えない天井を見上げた。
スマホが点滅している。自分の存在を示すかのように。
スマホを手に取り、電話の相手の名前を見て安心した。同級生だ。

…でも、出ない。出る気分じゃない。

息が苦しくなり、台所の蛇口を捻り水を身体に取り込んだ。苦しみが少し和らいだ。

苦しい。苦しい。

こんな想いがあるのなら、この身を投げ打ちたくなった。

それが、黒闇に感じた孤独の瞬間。